2008年4月15日火曜日

「不確実性」と「リスク」

『1997年―世界を変えた金融危機』竹森俊平著(2007年)
1997年の東アジアの金融危機に端を発して、現在の世界経済の流れや問題点をまとめた良書。現代の経済現象を論理的に展開・分析し、非常に分かりやすく説明され、ページをめくるたびに目から鱗がポロポロと零れ落ちた。そして、フランク・ナイトという経済学者の存在を知ることができたのも、非常に大きな収穫だった。
曰く「ナイトに言わせれば、「リスク」には、それをカバーするためのビジネスが成り立つという性格がある。たとえば自動車保険を売り出す損害保険会社は、過去の統計により自動車事故の一般的確率を予測する。その予測をもとに多数の自動車オーナーと保険契約を結び、「大数の法則」を働かせる。そうやって、保険の支払いをその一般的確率に基づいた金額の近くに収められるので、保険ビジネスが成り立つ。「リスク」というのは、このように経済にとってさほど問題にならない不確実性である。しかし、経済にとって厄介な問題を生じさせる不確実性もある。確率分布を想定できないタイプの不確実性、すなわち「真の不確実性」もしくは「不確実性」である。サイコロのように理論的に確率を推測できるわけもなく、そうかといって類似した事象が過去に数多く発生したこともない事象の場合、確率分布を想定できない。」(86、87頁より抜粋)
「リスク」と「不確実性」の違いを認識し、定義し、その知見に基づいて現代の経済を眺めてみると…

いやぁ、久しぶりに面白い本だったなぁ。

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